新潟県長岡市川口を拠点に「地域プロデューサー」として働く栗原里奈さんと、長野県栄村で「農村と都市との架け橋人」として活動する渡邉加奈子さん。
移住女子フリーペーパー『ChuClu(ちゅくる)』の作成を通して出会った2人の現在の働き方は、これから移住を志すひとにとって、参考になることばかり。2人の仕事と働き方、そして移住女子の仕事の見つけ方について、等身大の声を聞きました。
渡邉 加奈子:長野県栄村
1982年生まれ。大阪府出身。大学の調査研究をきっかけに訪れた長野県栄村に2008年移住。移住前は、京都の私立大学で事務職員として働いていたが、栄村で暮らす人々の生きる力の強さに憧れ「むらの人たちのようになりたい」と移住を決意。移住後は、自身の住む青倉集落で「青倉米」を生産する青倉受託作業班の仲間に入り、生産と、米や野菜の産直活動を行う。また、村中にあるさまざまな仕事を発掘し「むらの猫の手」となるべく、農業、体験プログラム、NPOの「人手が足りない」ところの事業支援を行う。
栗原 里奈:新潟県長岡市
1986年千葉県松戸市生まれ。東京の大手企業に勤め、裕福な暮らしに満足していた中、東日本大震災を経験。お金があってもお米が買えない体験をし、お金に依存し過ぎた暮らしに気づく。2012年に結婚した後、2013年11月新潟県長岡市の中山間地に念願の移住を果たす。2014年6月第一子を出産。地域の人に見守られながら子育て奮闘中。現在は新潟地域プロデューサーとしてイベント企画・運営だけでなく、講演や執筆活動にも邁進。SUZUgroupに所属しながら、食を中心とした新潟県の文化の発信に努めている。
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移住を通じて、新潟と長野がつながった
渡邉加奈子(以下、加奈子) 知り合ったのは、いつだっけ?
栗原里奈(以下、里奈) 2012年の暮れくらいかな? 私が2012年4月に引っ越してきて、初めての冬を迎えて、新潟の曇り空にやられて、プチ冬うつ状態になった頃。
加奈子 あはは。
里奈 落ち込んでいたときに、Iターン留学『にいがたイナカレッジ』の交流会があって、そこに加奈子ちゃんがいた。ほかにも、佐藤可奈子ちゃんやインターン生がいて、イナカレッジの事務局の日野さんが「移住女子をテーマにしたフリーペーパーを作りませんか?」って提案してくれたんだよね。
里奈 そして、みんなで楽しくプロジェクトを進めていたら、移住女子のフリーペーパー『ChuClu』ができた。
加奈子 たしか最初のタイトルって……。
里奈 「月刊移住女子」。
加奈子 そうだ、そうだ(笑)。「ないよそれ!」「ダサいからやだ!」みたいな声が多かった。
里奈 カフェに置いても違和感がないような、雑貨感のあるものを作りたかったんだよね。
加奈子 そうそう。「移住女子が冊子のテーマなら、ターゲットも女子じゃない?」って。そんなかんじで、里奈さんとは、フリーペーパーの制作チームとして出会ったのが最初ですね。
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「地域プロデューサー」と「農村と都市との架け橋人」
加奈子 ざっくりと、今どんなことをしているのかそれぞれお話しましょうか。
里奈 私は「地域プロデューサー」と名乗らせてもらっています。簡単にいうと、新潟の魅力を発信するためのイベントやツアー、加工品のプロデュースなどを企画して、実行するという仕事です。
2012年に移住してから、2016年3月まではずっと個人事業主として仕事をしていたんだけど、この4月からは新潟の食材や郷土食を現代のニーズに合うかたちで提供する、「寿々瀧(SUZUgroup)」の社員になりました。
加奈子 なんで働き方を変えようって思ったの?
里奈 ひとりで仕事をするよりも、仲間でわいわい協力してやりたいなっていう気持ちが、どこかにあったんだろうね。加奈子ちゃんは?
加奈子 私の仕事は大きく分けると3つ。1つ目が、栄村の直売所「かたくり」のパートの仕事。2つ目が、『妻有新聞』という新潟県十日町市と津南町、長野県栄村のローカル紙のパートの仕事。それは、基本的に事務仕事なんだけど、たまに記者として取材に行くこともあります。
で、一番の柱になっているのが、3つ目の青倉米の受託作業班のメンバーとして、お米の生産と、販売をする仕事。
里奈 青倉米は加奈子ちゃんが栄村で暮らしたいと思うようになった大きなきっかけだもんね。
加奈子 そう。私がこの場所で働きたいと思った一番の理由は、青倉米に携わるひとの姿が本当にかっこいいなと思ったことだったんだよね。栄村の景観を守るために、村の有志が高齢化によりできなくなった田んぼをみんなで引き受けて、お米を作り続ける姿に感動して、私もその仲間に入りたいと思ったんだ。
だから、3つのどの仕事も好きだけれど、一番守りたいものは何かと聞かれたら、やっぱり青倉米の仕事。そのために、フルタイムの仕事を選ばずに、いろいろな仕事を組み合わせているといっても過言ではないです。
起業だけが移住後の仕事じゃない
加奈子 なんとなく最近考えていることなんだけど、移住を志すひとたちって、農業をやっていますとか、農家カフェを運営していますとか、民宿、ゲストハウス運営とか何かしら起業をしている方々がクローズアップされる傾向がある気がしていてね。
里奈 うんうん。
加奈子 「もっと普通でもいいんじゃないの?」という漠然とした想いが、芽生え始めている。
里奈 というと?
加奈子 もちろん目的を持って移住するのはすごく大切だし、(畠山)千春ちゃんが言っているみたいに、移住のミスマッチをなくすことも、重要な視点だと思っている。でも「それが移住のハードルを上げていないかい?」って思うときもあって。
里奈 なるほどね。
加奈子 もっとライトな移住も、スタイルとしてはあっていいんじゃないかなって。これは、ともすれば誤解を招く発言だから、気をつけたいんだけど。
里奈 でもさ、加奈子ちゃんの、仕事を現地で見つけるそのスタイルもすごいと思うんだよね。
加奈子 うーん……そう?(笑) 移住を決めるとき、1年間くらいは山村留学をする心づもりだったからかな。3年間まじめに大阪で働いたし、まずは栄村で暮らしたいと思う自分の気持ちを信じてあげよう、と思っていました。
加奈子 私は明確に「こんな仕事をしたい!」という思いを持って栄村に越してきてなくて。栄村で暮らすということが私の核。暮らしの中から、自分のできることを見つけようと思った。直売所の仕事も、栄村をふら〜っと歩いていたら、村のひとに「あんたヒマか」って呼び止められて(笑)。そういう形で仕事を手に入れたからねぇ。村に入ることで、新しいものが見えてきて、そこから仕事になるものが見えてくると思います。実際、青倉米の仕事はそうでした。村に移住するまでは、青倉米のことをよく知らなかったんだ。村の人の働く姿を見て、「私もやりたい!」って思ったの。
里奈 まさにそれがハローワークに出ていない求人、だね。加奈子ちゃんと、池谷の可奈子ちゃんの話を一緒に聞いたら分かりやすいかもね。経緯や境遇が似ているかも。私は、2人とまたちょっと違うと思う。
里奈 私は新潟という地域を好きになって、受け入れてもらって、そして新潟のおもしろさや素晴らしさを、仕事をする中でどんどん知っていって、今も進行系で、新潟を好きになっているんだよね。そしてそれを、子どもとか自分の孫世代まで繋げていきたい。
だから私は、地域プロデューサーとして、いろいろな角度から新潟の良さを伝える仕掛けをつくりたくて、それに加えて今の家がある川口に住んでいたいというスタンス。
私はもちろん川口のことが大好きだけど、川口の仕事を中心にしているわけじゃないんですよ。2016年春から、川口の子育てサークルの代表の活動も始めたから、そういった地域との関わりはもちろんあるけど。
加奈子 川口の仕事をしたいって思う?
里奈 川口のためになりたいとは、ずっと思っている。だからこそ、移住女子の活動もしているし。でも、強いて言葉にするなら、地域のステップと私のステップが合っていないからこそ、まだ行動していないんだろうなって思うよね。
川口には、地域のことを考えて動いているひとがすでにいると思うし。そこに私が口を挟むんじゃなくて、私がいま新潟県内のよその街でやっている、新潟県の魅力を発信するイベントなり、ツアーのプロデュースがどんどん大きくなっていって、私にも資本が持てて、じゃあ今度川口でこういうことがやりたいって動き出すイメージかな。
そのためにも、経済効果とか影響を与えられるような存在になりたいなと思っています。
加奈子 なるほどね。そういえば私も、栄村のために何かをしたいと強く思っていた時期もあったんだけど、必ずしも地域で生業をつくりだすことが、いつでも地域のためになるわけじゃないというか。
地域の行事に参加したり祭りで役をやったり、村のおばあちゃんと仲良くなるということでも地域のためになることはあるでしょうから。こういうことをしなればならない、と思い込んでしまうと、どんどん自分が苦しくなることがあるなって、この数年は思っていたよ。
地域への関わり方とか時期は、ひとそれぞれの心地いいやり方でいいと思うなぁ。
移住女子の日々のスケジュール
加奈子 里奈ちゃんは、移住と同時に結婚して、今はお母さんだよね。子どもが産まれてから、やっぱり生活リズムは変わった?
里奈 うん、すごく変わったと思う。たとえば……子どもを一時保育に預けられるパターンの日は、8時半に子どもを保育園に送り届けて、9時に出社。社内でパソコンに向かってメール返信や調整、企画書を書いて、お昼になったらお弁当を食べる。午後はまた仕事を続けて、加工品のパックなんかも今の会社はやるので、夕方にはその作業。そして17時半がお迎えの時間だから、17時には「お疲れ様でした」と言って帰る。
で、家に帰って、ごはんを作って食べさせて、お風呂に入れたりして。で、21時に寝かしつけて、結局一緒に寝てしまうこと多い(笑)。
加奈子 お母さんって大変だね!
里奈 週末は何もなければ、子どもと一緒にお菓子づくりや、平日のお弁当用の常備菜をつくりをして。家でも仕事ができるけど、パソコンやスマホをいじったら子どもがもう、「遊んでー!」ってなるから(笑)。必然的に週末は諸々の返信作業が遅くなっちゃうかな。
加奈子ちゃんの場合はさ、季節労働もあるから春夏秋冬で違うもんね。
加奈子 あ、でも今年はスキー場に行かなかったから。
里奈 雪が少なくて?
加奈子 いや、2015年からは直売所ができたから。それまではたしかに毎年、冬はスキー場で仕事していたね。現在の状況でいうと、平日の午後は、毎日新聞社に出勤するということが決まっていて。
里奈 へぇ。
加奈子 月曜日から金曜日まで、毎日。だから、午前中の時間帯で、直売所の仕事をすることが多いかな。
一番ベーシックなスタイルは、午前中に直売所に出勤して、お昼を食べに家に戻って、ちょっとお昼寝をして、午後からは新聞社に出社、かなぁ。青倉米の仕事は、発送が重労働。発送日は毎月25日と決まっているので、そこから逆算して4日間くらいは発送準備をします。だから、その期間は直売所の仕事を調整させてもらったりして。
あとそういえば、ほかにも地元のNPOの事務のお手伝いなんかもしているから、これは月に2回くらい出勤する。……こんな流れかな。結構流動的な感じ。
里奈 いいよね、このスタイル。
これから移住したい。そんなひとへのアドバイスは……
里奈 これから移住するひとに、仕事関連のアドバイス。……うーん、難しいなぁ(笑)。そういえばこの間のイベント「全国移住女子サミット」でも、「移住したいけど、仕事が見つかるか不安」という質問があったよね。
- 参考:全国移住女子サミット
加奈子 ……「頑張れ!」としか言えないかも(笑)。既存の仕事に就くとしても、たとえば何か生業を新たにつくるとしても、「自分で進む」という意思が必要なんだよね。仕事や暮らしのスタイルをつくっていこうという気持ち。
私は起業したわけじゃないけれど、でも私の「ハローワークに出ていない仕事」を見つけて、つなぎあわせていくスタイルだって、自分で動いたから見つけられたもの。受身だと状況は変わらない。厳しいようだけど、ゼロから全てを用意してもらえることは、多分ないから。
里奈 どこまで本気なのか、ですよね。
加奈子 です。
里奈 あとは、自分の気持ちの優先順位をきちんと考えてみること。加奈子ちゃんみたいに、「その地域に住みたいから仕事は問わない」という気持ちの方が強いのか、「この仕事に就きたい」という職種への気持ちが強いのか。両方を同時に叶えるのって、意外に難しいからね。
加奈子 移住は行動するしかない。東京で検索しても、分かることって本当に少ないから。
里奈 うん。行動は必要。
加奈子 だよね。恋人をウェブ上で探しても、なかなか見つからないように、移住先も一緒。移住してみたいなと思える地域があるのなら、そこが本当に住みたい地域かどうか、仕事も自分でできることがあるかどうかを含めて、足と時間を使って、一度はきちんと探してみないと。
冷たく聞こえるかもしれないけれど、これは愛のある言葉として受け取って欲しいな……。
里奈 私たちも移住してから毎年暮らし方、働き方が変わっていて、激動の日々を過ごしているけど、それを楽しんでいるよね。一度決めたことがすべてではないし、柔軟に対応することも、大切なのかも。
加奈子 今この記事を読んでくれているひとも、いつか一緒に頑張ろうって、言えるようになれたらいいね。移住女子は、いつでも仲間を募集していますよ(笑)。
(この記事は、にいがたイナカレッジと協働で製作する記事広告コンテンツです)
(一部写真提供:Iターン留学 『にいがたイナカレッジ』・栗原里奈・渡邉加奈子)
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